第五話 ― 信頼の距離

もう一度信じる前に、何を預けるか考える。

秘密を話すことも、一緒に出掛けることも、同じ約束ではない。関係を続けるか迷う夜に、何をどこまで頼れるかを考える。

友人にだけ話したはずのことを、別の人も知っていた。次に会っても、何を聞かれるか気になって話せない。裏切られた後の「もう信用できない」には、もう一度預けるのが怖くなった話や頼み事があります。まず、そこを具体的に確かめます。

秘密は話せないけれど、共通の趣味の集まりでは会いたい。仕事の連絡は続けるけれど、個人的な相談はしたくない。付き合いを続けるとしても、前と同じことを全部任せるとは限りません。ここでは、内緒の話を広められた友人とのやりとりを例に考えます。

何があって、何を任せられなくなったのか。

最初に、信用が揺らいだ出来事を書きます。「友人に話した家族の事情を、別の友人から尋ねられた」。誰から何を聞いたのか、本人が話したと認めたのか、まだ分からない部分はどこか。確かめたことと推測を混ぜずに、今ある情報を並べます。

似たことが前にもあったなら、その後に何を伝え、また何が起きたのかを続けます。「前にも同じことがあり、次からは人に話す前に聞いてほしいと頼んでいた」。一度の出来事なのか、話し合った後も繰り返されているのかで、今回聞きたいことは変わります。

「誰にも話さないで」と頼んでいたなら、その約束をなぜ守らなかったのかを聞きたい。口止めしていなかったなら、どこまで人に話してよいと思っていたのかを確かめたい。口止めしなかった自分の落ち度を探すためではなく、相手がどう扱っていた話なのかを知るための問いです。

その後に、「何が任せられなくなったか」を足します。家族の話をすることか、別の友人を紹介することか、自分の近況を預けること全般か。「あの人は信用できない」から、次の会話で迷っているところまで下ろしてみます。

会うとしたら、何を話すか。

集まりへ行くことにした後も、以前と同じように近況を聞かれるかもしれません。会うかどうかを決めるだけでなく、今は話したくないことも考えておきます。

趣味の集まりで会う場合の例

  • 共通の趣味の話はする。
  • 家族や仕事の詳しい事情は、今は話さない。
  • 帰りに二人で食事へ行く誘いは、今回は断る。
  • 話を広めた件を確かめるなら、集まりとは別の時間にする。

「最近、家の方はどう?」と聞かれたら、「その話は今は控えている。今日は趣味の話をしたい」と返すつもりでおく。「前は話してくれたのに」と続いたら、「前に話したことがほかの人へ伝わっていたので、今は詳しく話せない」と、変えた理由を短く伝える方法もあります。

伝えた後に説明を求められても、話したくない家族の事情を例として出すと、また同じ情報を渡すことになります。何を控えているかが伝わったところで、別の話題へ移るか、その会話を終えるかを考えます。

英国NHSは、他者を支える際に、自分がどこまで対応できるかを考えることを案内しています。ここで挙げた秘密を広められた後の返事は、その資料に載っている対応例ではなく、本稿で考えたものです。参考:NHS「Maintaining healthy relationships and mental wellbeing」

「もうしない」と言われた後に、確かめたいこと。

謝ってくれたとしても、どこまで話が広まったか分からないままでは、次に会う人への対応も決めにくい。まず今回残っている問題を確かめます。「誰に、どの部分を話したか」「その人にもほかへ話さないよう伝えてあるか」など、相手が分かる範囲で答えられることを尋ねます。

事情を確かめたいときの返事の例

ほかに誰に話したか、分かる範囲で教えてほしい。知らない人から急に聞かれるのがつらい。今は、前みたいに家のことを話すのは難しい。

訂正や説明を頼むときは、それによってまだ知らない人へ話が広がらないかも考えます。大勢の前で謝ってもらうより、実際に話を聞いた人への対応を頼みたい場合もあります。何をしてもらえば信用が戻るかではなく、今これ以上困ることを増やさないために何が必要かを伝えます。

その後のやりとりにも、考える材料があります。「詳しく話したくない」と伝えたとき、そこで聞くのをやめてくれたか。誰に話したかを、分かる範囲で説明したか。「それくらい」と話を小さく扱われたままか。返答と実際の対応を見ながら、今の距離を保つか、少し話す範囲を変えるかを考えます。

相手が対応してくれたのに、まだ話せないこともあるでしょう。「説明してくれたことは分かった。でも、今はまだ同じ話をする気になれない」と伝えるなら、何を受け取って、どこが変わっていないかが分かります。新しい秘密を渡して確かめるより、普段の会話の中で、伝えた希望がどう扱われるかを見ます。

会うたびに発言を確かめ直し、後で誰に伝わったかを追う状態が続くなら、その付き合いを続ける負担も判断材料です。共通の用事だけにする、二人で会うのを休むなど、情報を預ける機会そのものを減らすことも考えます。

別の人と話すときにも、前のことを思い出すなら。

新しく知り合った人の口癖や笑い方に、以前の相手を思い出すことがあります。そこで深い話をする気になれなくても、すぐに親しくなろうとせず、今話せる話題で会話を続けてみます。

例えば、趣味の話をする、短い予定を一緒に決める、頼まれたことを断る。そのときに交わした言葉や対応が、その人についての経験になります。後で気になったら、「前の人も同じ言い方をした」と「今回は断った後、それ以上頼まれなかった」を書き並べると、似ていた部分と今回起きたことを確かめられます。

反対に、その人自身から繰り返し私生活を聞かれたり、断っても話すよう迫られたりしたなら、今回のやりとりとして考えます。不安をすべて昔の出来事のせいにすることも、似たところだけで同じ人だと結論づけることもせず、目の前で起きたことを残します。

次の誘いに、今の付き合い方で返事をする。

ここまで考えても、前のように信じるか、完全に離れるかの答えが出るとは限りません。それでも、次の誘いへ返す文は具体的にできます。

当面の付き合い方を伝える例

集まりには行くつもり。二人で食事に行くのは、今回はやめておくね。共通の用事は、グループの連絡で確認したい。

この返事をした後、集まりで過ごしてみて、また考えることが出てくるかもしれません。思ったより普通に話せた、帰ってからずっと疲れていた、控えたい話をまた尋ねられた。次の予定は、そのやりとりも含めて考えます。

離れると決めると、楽しかった頃の記憶が残っていることに迷うかもしれません。付き合いを続けると、許したことにされるのが嫌かもしれません。その迷いは、許せないまま日常のやりとりをする話でも扱っています。

今は家族の話をしない。集まりには行くが、二人では会わない。そう決めたなら、次に自分が何をするかは見えています。「もう信用できる」と言える日を先に決めるより、その約束を自分が続けられるか、次の一回を過ごして確かめます。