「こうすればいいじゃない」と言われるたびに、説明をやり直したくなる。今日は解決策を選ぶ前に、何があったかを最後まで話したかった。そんな行き違いを減らすために、話せるかを尋ねる言葉に、どう聞いてほしいかを一言添えます。
「今、少し聞ける?」で相手の都合を確かめてから、「今日はまず聞いてほしい」と頼む。途中で助言が始まったときや、今は聞けないと言われたときの返し方も、架空の会話で見ていきます。
「聞いて」だけでは、欲しい返事まで伝わらない。
「仕事のことで聞いてほしい」と頼むと、相手は困りごとの相談だと思い、打開策を考えるかもしれません。話し手はその前に、どの場面が嫌だったかを話したい。どちらも同じ会話をしているつもりのまま、助言と説明が続くことがあります。
話を始める前なら、「聞いてほしい」に続けて、今日してもらいたいことを頼めます。
会話を始めるときの架空例
今、少し聞ける?
今日、仕事で嫌なことがあって。どうすればよかったかはまだ考えられないんだけど、何があったかを話してもいい?
「最後まで聞いてもらえるとありがたい」と添える言い方もあります。時間を伝えるなら、話したい経緯がその中に収まるかも考えます。「五分だけ」と言いながら最初から説明し直すより、「長くなるから、今日は会議で言われたことだけ」と場面を絞る方が、どこまで話すつもりか伝わります。
すぐには話せない相手へ文章を送るなら、「今日のことを書いて送ってもいい?」と先に尋ねます。話す時間が取れないことと、長文を読む余裕があることは同じではないためです。
共感してほしいことと、同意してほしいことを確かめる。
「相手が悪いよね?」と聞くと、聞き手は出来事について判断を求められます。その場を見ていなければ、返事に迷うかもしれません。いま聞いてほしいのが自分の受けた印象なら、どの場面でどう感じたのかを話します。
例えば、「話の途中で笑われて、その先を言えなくなった。あそこがまだ悔しい」。この言い方なら、聞き手は相手の意図を断定しなくても、話し手が何を気にしているかを聞けます。「私にも悪いところがあったのかな」と言ったあとで、今はその検討をしたいわけではないと気付いたら、「正しかったかより、まずあの場面の話をしたい」と言い直せます。
厚生労働省「こころの耳」の傾聴練習には、質問攻めや別の話題への誘導を避け、助言を控えて聴く練習が紹介されています。職場などでの研修用の練習ですが、まず話を聞く時間を取るという点は、依頼の仕方を考える参考になります。参考:厚生労働省「傾聴練習の進め方3」
欲しい反応も、考えてみると違いがあります。話の途中に相づちがほしいのか、最後に感想を聞きたいのか。「何も言わないで」では伝わりにくいときは、「まず一通り話してから、どう聞こえたか教えてほしい」と、会話の順番で頼むこともできます。
途中で助言が始まったら、話の目的へ戻す。
最初に伝えていても、話を聞くうちに相手が案を出すことはあります。そこで一案ずつ「それは試した」「その方法は難しい」と説明を始めると、話したかった場面から離れていきます。今は案を検討できないことを、短く伝えます。
話を戻す架空例
今はまだ、どうするかまで考えられなくて。
先に、あのとき何があったかを話してもいい?
相手の案に賛成したふりをしたり、全部に反論したりせず、いま話したいところへ戻る言い方です。話すうちに助言も聞きたくなったら、「ここからは、どうしたらよさそうか聞いてもいい?」と頼み直します。
言い直しても助言への応答ばかりになり、話し続けるのが難しいなら、「今日はここまでにするね」と切り上げます。言い方を変えて何度も説明するより、続きは別の機会に話すのか、自分のメモに残すのかを、会話を終えてから考えます。
聞けないと言われたとき、どう返すか。
「今日は疲れていて聞けない」と返ってきたら、今日は聞く余裕がない、という返事として受け取ります。「分かった。また話せるときに聞いてほしい」と返す形もあります。今すぐ次の日時を決めたい場合は尋ねられますが、相手にも予定が分からないことはあります。
断られたあと、話の大事さを伝えようとして長い説明を送ると、結局その場で読んでもらう依頼になります。続きを送る前に、今日は聞けないという返事を受け取ったところでやりとりを終えます。すでに長文を送っていたなら、重ねて返事を催促する文を足さず、相手の返答を待ちます。
困っている内容に期限があるなら、友人に聞いてもらう約束とは別に、その用件の相談先を探します。職場での対応や手続きの確認と、今日嫌だったことを聞いてほしい気持ちは、同じ相手への一回の会話で扱わなくても済みます。
相手が決まっていない場所では、返信のルールを見る。
個別の会話なら、始める前に聞き方を相談できます。公開掲示板には、まだ話したことのない人からも返信が届きます。「助言は不要」と書いても、希望どおりの反応だけが返るとは限りません。共感を中心とする場か、意見交換をする場か、返信を閉じられるかを先に読みます。
言葉を人に見せたいのか、誰かと会話をしたいのかで、候補は変わります。返信と公開範囲から場所を比べる手引きでは、その違いから書く場所を選べます。
会話がかみ合わず、何を聞いてほしかったのか自分でも分からなくなったら、最初に話そうとした場面を一つだけ書きます。「会議で言葉を途中で止められたこと」「帰り道まで言い返す言葉を考えていたこと」。書き出せなければ、最初の一文だけを書く方法から始められます。
次に誰かへ頼むときは、その一文に「今日はこの話を、最後まで聞いてほしい」と添える。何を話すかと、どう聞いてほしいかがそろうと、次の会話を始めるための依頼になります。